満州国演義 事変の夜

1930年 世界恐慌の波が未だおさまっていない

混沌とした世界情勢の中、中国東北部

上海 天津など大陸において 関東軍

日本外務省 特殊工作員 商売人 大陸放浪者

馬賊 男装の麗人 とまあ様々な日本人が

エネルギッシュに蠢いていた。

物語は敷島家の4人兄弟を通じて描かれている。

長男の太郎は奉天総領事館の参事官 次男の

次郎は馬賊になり 3男の三郎は関東軍の憲兵隊中尉

4男の四郎は早稲田の学生だったが運命に翻弄され

上海に渡り特務工作員に利用されながら自分自身を見つけられずに生きている。

この4人が微妙に絡み合いながら船戸は物語を進めるのであるが この時代の満州 上海はスケールといい

情報量や登場人物の多さといい 謀略の多さといい

とても真正面から挑んで描ける素材ではない。

しかも4人の生きざままで。

船戸与一が最後に満州事変に挑んだ心意気は

すごいと思うのだが、もう少し物語の焦点を絞ったほうが良かったのではないか と思う。

途中物語の進行が緩慢になって1日2~3ページという日が続いた。何とか読了したが

満州国演義3に読み進む気力は私には無い。読み手がこれだけ疲れるのだから

作者の船戸のエネルギーは想像を絶するのである。

この小説の執筆で命を削られたのではないかとさえ思う。